日本の近代化の記録を後世に残そうと、宮内庁が明治から戦前までに撮影された古写真のデジタル化に取り組んでいる。写真は当時の国情を視覚的に伝える“報告書”として、天皇のお手元にのぼったものだが、退色などの劣化が問題となっていた。
宮内庁はデジタル化した写真をホームページで公開することも検討しており「検索機能や解説を充実させたデータベースを構築し、多くの国民に利用してもらいたい」と話している。
◆保管3万点
宮内庁で保管する古写真は約3万点。明治天皇の行幸先でお付きの写真家が撮影したものや、地方自治体が近代化の進捗(しんちょく)状況を報告するために献上したものなどだ。
関東大震災で倒壊した東京・浅草の高層建築、凌雲閣(りょううんかく)、沖縄戦で破壊された首里城、まげを結い着物をまとった男たち…。色あせた写真の中には、貴重な景色が広がっている。
天皇のそばに仕える侍従職によって保管されてきたが、昭和12年に約1万点が当時の宮内省図書寮(現宮内庁書陵部)へ。残り約2万点が三の丸尚蔵館に引き継がれた。
明治期の写真の特徴について、三の丸尚蔵館の学芸員は「台風や地震など自然災害の惨状を写した写真が多い」と話す。テレビはもちろん、新聞の写真製版もなかった時代。地方から届く写真が各地の様子を伝えるメディアの役割を果たしていた。「こうした写真をみて、明治天皇が被災地に救済金を贈られることもあった」という。
貴重な写真は、温度や湿度が厳重に管理された倉庫で保管されてきた。しかし、年々劣化が進んでいる。
古写真の印画紙に用いられていたのは主に、卵白を薄紙に塗り乾燥させ、硝酸銀水溶液で処理した「鶏卵紙」と呼ばれるもの。「鶏卵紙は光に非常に弱いため、調査や研究で出し入れするたびに色があせてしまう」と書陵部の担当者は話す。
◆公開を検討
古写真の現状を維持しながら倉庫で保存していくことが難しくなる中、書陵部は平成18年からデジタルによる保存を始めた。三の丸尚蔵館でもデジタル化を進めている。
現在、古写真を閲覧するには申請書を提出するなど煩雑な手続きが必要だが「将来的にはインターネットで閲覧できるようにしていきたい。郷土史などの研究に役立ててもらえれば」(書陵部)と話している。
約3万点すべてをデジタル化するには開始から10年以上を要しそうだが、担当者らは作業が終わったものから一般公開ができないかと検討している。(篠原那美)
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